ワイヤーカットのコーナーRはどこまで小さくできる?ワイヤー径・溝幅との関係

Q.ワイヤーカットで、内側のコーナーRはどこまで小さくできますか?
A.仕上げ加工後の目安は、φ0.20mmのワイヤーでR0.105mm程度、φ0.25mmでR0.130mm程度です。内側の角にはワイヤー半径と放電ギャップに応じた丸みが残るため、完全なピン角にはできません。必要なRに合わせて線径を選び、相手部品との干渉が問題になる場合は「角逃げ」も検討します。
※数値は目安であり、材質・板厚・加工条件・要求精度によって変わります。
「四角い穴に部品を入れたいが、角が当たってしまう」
「図面にR0.1以下と指定したいが、加工できるだろうか」
「細いワイヤーを使わずに加工費を抑えられないか」
角穴やスリット、金型部品の加工では、コーナーRの指定が線径選びや加工方法に関わります。
この記事では、ワイヤー径別のコーナーRの目安、溝幅との関係、角の干渉を避ける方法、発注前の確認事項を解説します。
ワイヤーカットで内側の角にRが残る理由
ワイヤーカット放電加工は、ワイヤー電極と金属の間に放電を起こし、その熱で材料を除去する加工方法です。
ワイヤーの断面は円形で、加工中はワイヤーと加工面の間に「放電ギャップ」と呼ばれる隙間があります。そのため、角穴などの内側には、ワイヤー半径より少し大きな丸みが残ります。
最小内角Rの目安 ≒ ワイヤー径 ÷ 2 + 片側の放電ギャップ
この関係から、より細いワイヤーを使用することで、小さな内角Rを狙えます。
まずは、混同しやすい用語を整理します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ワイヤー径 | 使用するワイヤー線そのものの直径 |
| ワイヤー半径 | ワイヤー径の半分 |
| 放電ギャップ | ワイヤー表面と加工面の間にある隙間 |
| 内角コーナーR | 角穴や切り欠きの内側に残る丸みの半径 |
| 加工溝幅・切断幅 | ワイヤーが通過して材料が除去された幅 |
なお、この記事で説明する最小Rは、穴や切り欠きの「内側の角」を対象としています。部品の外側にある凸形状の角には、同じ式をそのまま当てはめることはできません。
【比較表】ワイヤー径別・仕上げ加工後のコーナーRの目安
阪神精工では、φ0.30mm・φ0.25mm・φ0.20mm・φ0.15mmのワイヤーを、加工内容に応じて使い分けています。
セカンドカットなどの仕上げ加工を含めて検討する際の目安は、以下のとおりです。
| ワイヤー径 | ワイヤー半径 | 仕上げ加工後の最小内角Rの目安 |
|---|---|---|
| φ0.30mm | 0.150mm | R0.155mm程度 |
| φ0.25mm | 0.125mm | R0.130mm程度 |
| φ0.20mm | 0.100mm | R0.105mm程度 |
| φ0.15mm | 0.075mm | R0.080mm程度 |
※φ0.20mm・φ0.25mmの仕上げ目安を基準とし、φ0.30mm・φ0.15mmは「ワイヤー半径+約0.005mm」で概算しています。各数値は加工保証値ではありません。

例えば、内角をR0.1以下に収めたい場合、φ0.20mmではワイヤー半径だけで0.1mmになるため、放電ギャップを含めた余裕がありません。φ0.15mmなど、より細いワイヤーでの加工を検討します。
一方、R0.13程度を許容できる形状であれば、φ0.25mmも候補になります。ただし、許容値が加工目安と近い場合は、公差や加工のばらつきまで含めて確認が必要です。
線径は、必要なRを満たせるかどうかに加え、加工時間や安定性とのバランスで選びます。
荒加工と仕上げ加工でコーナーRは変わる
ワイヤーカットでは、最初に形状を切り出す荒加工と、その後に寸法や面を整える仕上げ加工で、加工条件やワイヤーの通る位置を変えます。
コーナーRも、荒加工時の放電ギャップだけで、仕上げ後の限界を判断することはできません。
φ0.20mmのワイヤーを例に、ギャップの違いによる計算を比較します。
| 比較項目 | 片側ギャップ0.020mmの場合 | 片側ギャップ0.005mmの場合 |
|---|---|---|
| ワイヤー半径 | 0.100mm | 0.100mm |
| 仮定する放電ギャップ | 0.020mm | 0.005mm |
| 計算上の最小内角Rの目安 | R0.120mm | R0.105mm |
※放電ギャップの違いを説明する計算例です。荒加工・セカンドカットそれぞれのギャップが、必ずこの値になるという意味ではありません。
「φ0.20mmのワイヤーだから、最小Rは必ず0.12mm」というわけではありません。
また、セカンドカットを行えば、どのような部品でも同じRに仕上がるわけではありません。材質・板厚・形状に合わせ、荒加工から仕上げまでの加工経路や加工代を検討します。
ワイヤー径と溝幅は同じではない
狭いスリットを設計する場合は、コーナーRと併せて「加工溝幅」も確認します。
ワイヤーの両側で材料が除去されるため、一度の直線的な切断で生じる幅は、ワイヤー径より大きくなります。
切断幅の目安 ≒ ワイヤー径 + 片側の放電ギャップ × 2
例えば、φ0.20mmのワイヤーで片側ギャップを0.020mmと仮定した場合、次の計算になります。
0.20+0.020×2=0.240mm

ただし、この式と仕上げ時のギャップだけを使って、加工後の最終溝幅を決めることはできません。
| 加工の状況 | 溝幅を考える際のポイント |
|---|---|
| ワイヤーを一度通して切断する | ワイヤー径と両側の放電ギャップを考慮する |
| 切断済みの溝の側面を仕上げる | 荒加工でできた幅と、仕上げで除去する量を考慮する |
| 溝の輪郭を周回して加工する | ワイヤー径だけでなく、加工経路と寸法補正によって幅を設定する |
仕上げ時の放電ギャップが小さくなっても、すでに加工した溝が狭く戻るわけではありません。
狭い溝を依頼する際は、使用するワイヤー径だけを指定するよりも、必要な溝幅と寸法公差を明確に伝えることが重要です。
ピン角部品が干渉する場合の対策
四角い部品を角穴にはめ込むとき、穴側に残ったRと、相手部品の角が干渉することがあります。
この場合の主な対策は、次の3つです。
| 対策 | 内容 | 検討時の注意点 |
|---|---|---|
| 細いワイヤーを使用する | 穴側の内角Rを小さくする | 完全なピン角にはできない。加工時間や安定性も確認する |
| 穴側に角逃げを設ける | 相手部品の角が当たる部分を局所的に広げる | 周囲の肉厚、強度、必要な接触面を確認する |
| 相手部品の角を面取りする | 相手側の角を落として干渉を避ける | 相手部品の形状変更が可能か確認する |

細いワイヤーで内角Rを小さくする
穴側の形状変更が難しく、小さなRが必要な場合には、細いワイヤーでの加工を検討します。
ただし、細線は断線への配慮が必要で、加工速度を抑える場合があります。特に板厚が大きい部品では、要求する形状精度を維持できるかも確認します。
穴側に「角逃げ」を設ける
角逃げは、相手部品の角が当たる部分に空間を設け、干渉を避ける方法です。
穴の四隅を丸く広げる方法や、機能上問題のない方向に逃げを延ばす方法があります。
逃げの大きさや位置は、ワイヤー半径だけで決めるものではありません。相手部品の形状や組み付け時の隙間を確認し、位置決めに必要な面を残して設定します。
相手部品の角を面取りする
穴側に逃げを追加できない場合は、相手部品の角に面取りを設ける方法もあります。
どちらの部品を変更する方が合理的か、機能・加工費・組み立てやすさを合わせて検討します。
角逃げで加工費を抑えられる場合がある
小さな内角Rを必要とするために細線加工を選んでいる場合、角逃げを設けることで、より太いワイヤーを使用できる可能性があります。
線径の選択肢が広がれば、加工時間や費用を見直すきっかけになります。
一方、角逃げには次のような確認も必要です。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 加工時間・費用 | 太いワイヤーを使えても、逃げの追加で加工経路が長くなる場合がある |
| 残る肉厚・強度 | 局所的に材料を除去するため、周囲の形状への影響を確認する |
| 接触面・位置決め面 | 必要な当たり面まで削らないようにする |
| 嵌合の寸法公差 | 角逃げだけでは、ガタつきや締まり具合は決まらない |
| 図面変更の可否 | 設計側と逃げの形状・寸法を合意する必要がある |
角逃げは、角の干渉を避けるための形状です。寸法公差の管理が不要になるわけではありません。
「部品が入ること」と「必要な精度ではめ合うこと」を分けて考えることが大切です。
設計・発注前の確認事項
加工相談の際は、次の情報をお知らせいただくと、線径や加工方法を検討しやすくなります。
| 確認項目 | 伝えていただきたい内容 |
|---|---|
| 材質・熱処理 | 材質名、焼入れなどの熱処理の有無 |
| 板厚・加工高さ | ワイヤーで切断する部分の厚さ・高さ |
| コーナーR | 狙う寸法と許容範囲。「R0.1以下」などの要求 |
| 溝幅・寸法公差 | 必要な溝幅と許容差 |
| 面粗さ | 加工面に求める仕上がり |
| 相手部品 | 組み合わせる部品の形状・寸法・使用目的 |
| 逃げ・面取り | 追加できる位置と、変更してはいけない面 |
| 数量・納期 | 製作数量と希望納期 |
特に「R0.1を狙って加工したい」のか、「R0.1以下なら機能上問題ない」のかによって、確認すべき条件が変わります。
相手部品との干渉が問題の場合は、加工する部品だけでなく、組み合わせる部品の図面や写真もあると、検討を進めやすくなります。
阪神精工株式会社が対応できること
阪神精工株式会社では、φ0.30mm・φ0.25mm・φ0.20mm・φ0.15mmのワイヤーを使い分け、角穴・異形穴・スリット・微細溝などの加工に対応しています。
| ご相談内容 | 検討するポイント |
|---|---|
| 小さなコーナーRを加工したい | 線径、材質、板厚、仕上げ条件、許容範囲 |
| 相手部品が角で干渉する | 角逃げや面取りの可否、残すべき接触面 |
| 狭いスリットを加工したい | 必要な溝幅、公差、加工高さ、周囲の肉厚 |
| 加工費を見直したい | 許容できるR、線径の選択肢、逃げ形状、仕上げ条件 |
図面の数値だけでなく、その部品をどのように使用するかを確認し、加工方法を検討します。
対応内容や関連する加工事例は、以下のページでもご紹介しています。
まとめ|コーナーRは仕上げ条件と部品の機能を合わせて考える
ワイヤーカットの内角Rは、ワイヤー径と放電ギャップによって変わります。仕上げ加工後の目安として、φ0.20mmではR0.105mm程度、φ0.25mmではR0.130mm程度が参考になります。
さらに小さなRが必要な場合は細いワイヤーを検討し、角の干渉を避けることが目的なら、角逃げや相手部品の面取りも比較します。
阪神精工株式会社では、設計段階からコーナーRや角逃げのご相談を承っています。加工可否や加工費でお困りの際は、図面を添えてお問い合わせください。
参考資料
本記事の線径別Rは、阪神精工の仕上げ加工の目安と、それに基づく概算です。以下の資料は、加工原理や設計上の考え方の参考として掲載しています。


