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折れたタップを放電加工で除去できるのはなぜ?原理とねじ山を守るポイント

折れたタップを放電加工で除去できるのはなぜ?原理とねじ山を守るポイント
折れたタップを放電加工で除去する原理と、ねじ山への損傷を抑えるポイントを解説します。

ねじ加工の途中でタップが折れ、穴の中に残ってしまった。仕上げまで進んだ部品を前に、取り出す方法が見つからず困った経験はないでしょうか。

ハイス鋼や超硬合金などで作られたタップは硬く、一般的なドリルで削って取り除くことが難しい工具です。そのような場合に、除去方法の候補となるのが「放電加工」です。

放電加工で硬いタップを除去できるのは、電気火花の熱で金属を少しずつ取り除くためです。 刃物で削る加工とは仕組みが異なるため、高硬度の工具にも対応できます

ただし、放電が自動的にタップだけを選んで削るわけではありません。製品側のねじ山を残すには、電極の位置や大きさ、加工範囲を適切に管理する必要があります。

この記事では、折れたタップを放電加工で除去できる原理と、具体的な取り出し方、めねじへの損傷を抑えるポイントを解説します。

加工概要|折れタップ除去に使う放電加工とは

放電加工は、加工液の中で電極と加工対象の間に短い放電を繰り返し、その熱などの作用で材料を除去する加工方法です。

折れたタップの除去では、中心部を加工して残った破片を取り出す方法などを検討します。

項目内容
加工対象ねじ穴の内部に残った折損タップ
主な加工方法細穴放電加工、形彫り放電加工
基本的な考え方タップの必要な部分を除去し、残った破片を取り出す
主な確認事項タップの材質・形状、折れ込み深さ、母材の状態、電極が入る方向

阪神精工では、細穴放電加工や形彫り放電加工を用いた除去について、折れ込み状態に応じて加工可否を確認しています。

なぜ放電加工なら硬いタップを除去できるのか

電気火花の熱で金属を少しずつ取り除く

切削加工では、刃物を材料に接触させて削ります。一方、放電加工では、電極と加工対象の間に微小な隙間を保ち、パルス状の電圧を加えて放電を発生させます。

放電した箇所では金属が局所的に溶融・気化し、発生する圧力などによって一部が飛散します。この小さな除去を繰り返すことで、加工が進みます。

電極がタップより硬い必要はありません。

電極とタップの微小な隙間で放電を繰り返し、熱で材料を少しずつ除去します。

この仕組みによって、通常の切削では加工しにくいハイス鋼や超硬合金のタップも、除去加工の対象にできます。

ただし、導電性があるだけで、どのような形状や深さでも加工できるとは限りません。電極を近づけられる空間や部品の保持など、実際の段取り条件も加工可否に関わります。

加工液が冷却と加工くずの排出を助ける

加工液には、放電を制御するための絶縁、加工部の冷却、加工くずの排出といった役割があります。

金属を溶かしても、加工くずが電極との隙間に残れば、安定した放電の妨げになります。加工液を適切に供給し、くずを排出することも、狙った範囲を加工するために重要です。

折れたタップは具体的にどう取り出すのか

中心部を除去し、残った刃先を取り出す

切れ刃と溝を持つタップでは、中心部を放電加工で除去し、残った刃先部分を取り出す方法が用いられます。

基本的な考え方は、次のとおりです。

  1. 位置を確認する
    折れたタップと、周囲のめねじとの位置関係を確認します。
  2. 中心部を放電加工する
    めねじに干渉しない範囲で、タップの中心部分を除去します。
  3. 残った破片を取り出す
    中心部でつながっていた刃先部分を分離し、取り出します。
  4. 穴の状態を確認する
    残留物の有無や、めねじの状態を確認します。
タップの中心部を除去して刃先部分を分離し、残った破片を取り出す方法の一例です。

タップ全体を溶かし切らなくても、中心部を取り除くことで、残った部分を外せる状態にできる場合があります。破損工具除去用の放電加工機メーカーも、この仕組みを紹介しています。

ただし、小さな穴を一つ開ければ必ず抜けるわけではありません。溝のない転造タップなどでは同じように刃先を分離できないため、形状に応じた除去方法の検討が必要です。

複雑な折れ込みでは電極形状と加工範囲を検討する

中心部の除去だけで取り出せない場合は、残った工具の形状や位置を確認し、どこまで放電加工するかを検討します。

細穴放電加工では細い電極で中心部を加工する方法、形彫り放電加工では折れ込んだ工具や穴形状に応じた電極を使う方法が候補になります。

エキストラクターなど別の工具も折れ込んでいる場合は、その情報も判断に必要です。残したいめねじとの位置関係から、電極と除去範囲を考えます。

タップ除去で難しい点|めねじを残せる範囲の見極め

非接触でも母材が削れる可能性はある

放電加工は、刃物を押し付けて切削する方法に比べ、機械的な負荷を抑えられます。

一方、製品側の母材も導電性があれば放電加工の対象です。電極位置がずれたり、加工範囲が広がりすぎたりすれば、めねじも削れる可能性があります。

また、熱を利用する加工なので、非接触であることは「熱の影響がない」ことを意味しません。

めねじへの損傷を抑えるには、放電させる場所と加工条件を管理することが必要です。

深い止まり穴では穴底との位置関係も重要

穴の入口付近と、深い止まり穴の奥では、電極を近づける条件も加工くずの排出条件も変わります。

そのため、ねじの呼び寸法だけでなく、入口から折れた部分までの深さや下穴の深さも確認します。止まり穴では、穴底まで加工を進めすぎないよう、除去範囲を見極める必要があります。

めねじへの損傷を抑える技術的なポイント

タップ除去でねじ山を守るため、電極の位置、除去範囲、除去後の機能を確認する断面図
折れたタップを放電加工で除去する原理と、ねじ山への損傷を抑えるポイントを解説します。

電極の径と位置を管理する

電極の大きさは、タップの外径だけを基準に決めるものではありません。残したいめねじの内径、タップの断面形状、放電によって除去される範囲を考えて選定します。

電極と加工対象の間には、放電に必要な隙間があります。このため、電極の輪郭だけで加工範囲を判断しないことが大切です。

深い位置まで加工する場合には、中心位置に加えて、電極と穴の軸の傾きにも配慮します。

放電条件と加工くずの排出を整える

放電加工では、電流値や一回の放電時間、放電を休止する時間などを制御します。工具の状態に合わせて、安定して除去できる条件を検討する必要があります。

止まり穴や深い箇所では、加工液の供給と加工くずの排出も重要です。加工速度だけでなく、必要な範囲を安定して除去できることが求められます。

除去後の再使用可否を確認する

タップを取り除けたことと、ねじ穴をそのまま使えることは、別の判断です。

タップが折れた時点や、それまでに除去を試みた段階で、めねじに損傷が生じている場合があります。除去後は、ねじ山の状態と図面上の要求を照らし合わせ、再使用の可否を確認します。

専用ドリルでも除去できるのでは?

条件によっては、専用ドリルで除去できます。実際に、折損タップの中心部を砕いて取り除くための超硬ドリルが販売されています。

ただし、適用できるタップの種類や母材には制約があります。例えば、OSGの折損タップ除去用ドリルでは、超硬タップや転造タップへの使用は対象外とされています。

そのため、放電加工を選ぶかどうかは、「タップが硬い」という理由だけで決めず、タップの種類、母材、折れ込み状態、残したいねじ穴の条件から判断することが大切です。

阪神精工株式会社が対応できること

阪神精工では、細穴放電加工・形彫り放電加工による折れタップ除去のご相談を承っています。

加工可否を確認するため、分かる範囲で次の情報をお知らせください。

  • タップの情報: 呼び寸法、種類、材質
  • 製品の情報: 母材の材質、熱処理の有無、部品全体の大きさ
  • 穴の情報: 貫通穴・止まり穴の別、穴の深さ、折れ込み位置
  • 現在の状態: すでに試した除去方法、追加で折れ込んだ工具の有無
  • ご希望: 数量、納期、再使用したいねじ穴の条件

すべての情報がそろっていない場合も、現在の状態が分かる写真や図面からご相談いただけます。

折れタップ除去の相談内容と依頼の流れを見る

まとめ|硬いタップの除去には加工原理と状態の見極めが重要

放電加工は、電気火花の熱などを利用するため、硬いタップの除去にも使えます。

中心部を加工して残った破片を取り出す方法など、折れ込み状態に合った方法を検討し、電極の位置・加工範囲の管理と、除去後の状態確認を行うことが重要です。

「タップが折れて工程が止まっている」
「仕上がった部品をできるだけ生かしたい」

そのような場合は、折れ込み箇所の写真や図面を添えて、阪神精工へご相談ください。

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